Theatre Collective HANCHU-YUEI

 2007年より、東京を拠点に海外での公演も行う演劇集団。すべての脚本と演出を山本卓卓が手がける。

 現実と物語の境界をみつめ、その行き来によりそれらの所在位置を問い直す。

生と死、感覚と言葉、集団社会、家族、など物語のクリエイションはその都度興味を持った対象からスタートし、

より遠くを目指し普遍的な「問い」へアクセスしてゆく。

 近年は舞台上に投写した文字・写真・色・光・影などの要素と俳優を組み合わせた独自の演出と、観客の倫理観を揺さぶる強度ある脚本で、日本国内のみならずアジア諸国からも注目を集め、マレーシア、タイ、インド、中国、シンガポール、ニューヨークで公演や共同制作も行う。

 『幼女X』でBangkok Theatre Festival 2014 最優秀脚本賞と最優秀作品賞を受賞。

090-6182-1813(制作)

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2017.1.15(sun)-1.24(Tue) 山本卓卓

January 27, 2017

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼1.15(Sun)

 

公演初日まであと5日。OFFの予定だったけれど「やろう」という意見の一致で午前中だけ追加稽古。とあるシーンのブリッジ(30秒くらい)をひたすら稽古。演劇は時間がかかる。とくに今回のような言語の壁が立ちはだかるような場合では余計に。でも臆せずにたっぷり我々は時間を使う。ゆっくりと感覚をすり合わせていく中でシーンには次第に血が通ってくる、ということはこれまでにも経験済みだから。

ランチは宿舎の近くの南インド料理屋「トライバル」へMOMOと美希恵と椎橋の4人で(福原はPiyushとNeelと居残り稽古)。この南インド料理屋には初めての来店だったけれどとても美味しかった。Appamというもっちりした薄いパンと魚のカレー、食後のチャイ。舌鼓。

 

 

▼1.16(Mon)

 

初日まであと4日。今日は初の通し稽古をした。足りていない要素も多々あるけれど不思議と心は落ち着いている。なぜこんなにも冷静なのだろうと考えたがおそらく共同演出をしていることによって作品が僕の中で相対化されているからだと思う。いつもは一人で演出をしてあれやこれやと頭の中で考えを巡らせ緊迫して(させて)いく。今回の場合はお互いの演出の癖や個性を目の前で眺めながら作品にいったい何が足りないかをNeelと話し合ってきた。すこぶる風通しがいい。

ディナーは宿舎の近くの北インド料理屋「ズク」へ美希恵と椎橋の3人で。福原は「お腹減ってない」とのことで不参加。田中美希恵のプロ意識の高さというか、作品への献身は範宙遊泳に必要な要素だと改めて感じる。時折そのプロ意識と献身ゆえの厳しさが他者に向けられることもあるが彼女は了見のもとにそれを行なっている。僕はその辺りの厳しさに関してものすごくドライというか、他者に厳しく接したところでどうせ何も変わらないお互い疲れるだけ、という諦めがベースにあるので最近は稽古場でも怒ったりしない。その代わりしつこく話を聞く。その「怒りたくなる対象」を捕まえて徹底的に質問責め(インタビュー、と僕は呼んでいる)にする。なぜこれをするのかというと作品に反映されるからだ。彼の発した言葉が脚本のエッセンスになったり演出意図を深めたりすることがあるからだ。彼の変革よりも作品の変革を僕は優先する。一方で田中美希恵はおそらく疲れを被ってさえ他者の変革を諦めない人だ。それってとても優しいことだと思う。今の僕にはもうそれができない。一度地の果てまで疲れ切ってしまったのかもしれない。まあともかく、こうした話題の中同じ机に座っていて一言も口をきかない椎橋を見てプロ意識に欠けるとは一切思わない。彼女もまた沈黙の中で作品に貢献しているのだから。たぶん田中も椎橋も、僕がこういう人間だからこそそのスタンスを選んでくれているのだなと感じる。必要な厳しさと必要な沈黙。福原の場合はもう少し勝手が違うかもしれない。それに関しては後日。

 

 

▼1.17(Tue)

 

初日まであと3日。朝5時頃目が覚めてしまう。考え事。読書。執筆。目覚ましにVashti Bunyanを聴く。今日も通し稽古をした。昨日よりは多少流れがよくなった。明日以降はもっとよくなるはず。取材が2件。

明日はバンガロールに出発なので冷蔵庫の残り物を全部使って料理。こっちにきてから頻繁に料理をするようになったが心が乱れている時につくる料理はめちゃくちゃ不味いということに最近気がついた。執筆期間中に作る料理やイライラしている時に作る料理、気分がノリノリの時に作る料理も不味い。しょっぱすぎたり薄味すぎたりしてしまう。往々にして平常心の時がうまくできる。だから料理をつくると自分のコンディションがよくわかる。そして不味い飯を食いたくないから平常心に戻そうと努める。インドにいるからそんな風に思うのかもしれないけど料理って少々瞑想めいたところがある。この日の料理はトマトとレンコンとニンジンをオリーブオイルで炒めて卵で綴じた。味は普通。それでもこれまでつくった中ではまともな方だった。

 

 

▼1.18(Wed)

 

初日まであと2日。昨日と同じように朝5時に自然と目が覚める。朝飯は昨日の残りをパンで挟んで食べた。美味。バンガロールへは飛行機で行く。8時30分に迎えの車が宿舎にやってきてインディラガンディー空港へ向かう。その車内で舞台監督のチュランジートが何を思ったのかメタルミュージックを大音量でかけ始め、それが福原を触発し二人はひとしきり盛り上がった。ドライバーのおじさんと僕はかなり迷惑していた(他の者は幸いにも別車両)。朝から大音量で他人の好きな音楽を聴かされてそれを僕が好きだったためしははっきり言って一度もない。すべての朝が誰しにも平等に許されたそれぞれの朝であろう。が、朝における趣味の強要は暴力だ。僕、ブチギレ寸前といったところで空気を読んでくれたのか彼らのDJ合戦は終わった。

飛行機に乗ってバンガロールへ向かう。機内食は普通。機内食に普通以上を求めてはいけない。Eric DolphyやAntonio Carlos Jobimを聴きながら仮眠、読書。

バンガロール空港を出てツーリストバスに乗って宿舎へ向かう。その道すがらJim O’RourkeのAll Kinds of People ~Love Burt Bacharach~ とチェリビダッケ指揮のBruckner Symphony No.8 他にも何か聴いたけど忘れた。チェリのBrucknerはことあるごとに聴いている。

19時頃ホテルに到着。予定よりも到着が遅れたのでこの日のリハーサルはキャンセルに。部屋でしばし休憩。3度目の渡印、シャワーのお湯が出ないだとかめちゃくちゃ汚いバスマットだとかトイレットペーパーがないだとか、そういったことにいちいち動揺しなくなった。20時から屋上のレストランでみんなと食事。酒。照明デザイナーのAnujと作品の内容について話す。Anujは「キャラクターたちはみな変だし、不思議なのに、どうして彼らを身近に感じて愛おしく思えるのだろう?」と言ってくれた。彼の照明がどうなるか楽しみ。

 

 

▼1.19(Thu)

 

初日まであと1日。6時起床。ホテルの朝食。オムレツと食パンとコーヒー。昨日のディナーの時も思ったが、このホテルのレストランの料理の不味さはいったいなんなのだろう? 味付けがどうのとか、そういった単純な問題ではない気がする。明らかに核が欠けている。その核とはつまりは愛情のことだ。ここのレストランの料理は母が子に作る味噌汁とは対極の精神状態でつくられたのであろう、そんな風なことさえ思いながら食べた。

10時からリハーサル。その前にNeelと僕は早めに稽古場入りしてディスカッション。お互いの共通認識が増えてきたのでディスカッションは最小限の言葉で済んだ。もうとにかくひたすらやるだけだ。

細かく、しつこく、稽古する。そして午後から通し稽古。その後も稽古場利用可能時間ギリギリまでひたすら作業。明日は初日。忘れないうちに書いておくがこの作品が好きだ。僕にしてはかなりストレートな作品になった。

稽古後に出演者のSheebaとPiyushと日本人メンバーで稽古場近くの南インド料理屋でディナー。カレー。カレー。カレー。ヌードル。カレー。といったラインナップ。美味。今日はもう疲れたので寝る。おやすみ日本。

 

 

▼1.20(Fri)

 

公演初日。6時30分起床。Jazz LiberatorzとPhillip Glassを聴く。いくつかの作業の後例のレストランで愛のない朝食。

ホテルからタクシーに乗り15分程でRangashankara劇場に到着。客席数300くらいの巨大な劇場。客席の傾斜が急で最後列から眺めると俳優の頭頂部がくっきりみえてしまう。当初の演出よりも俳優たちに目線をあげてもらわないとならない。

海外公演において劇場が想定と違うということは往々にしてある。事前に渡されている図面と実寸が大きく違っていたり、劇場のWEBサイトの写真が現実よりもはるか可憐に撮影されていたり、用意しておいてくれと言ったものが用意されていなかったり、する。想定とは違うということも想定しておかないと、ある種のおおらかさを身につけていないと、乗り越えられない。

この国の習慣なのかTadopoleがいつもそうなのか場当たりをまったくせずゲネプロ。テクニカルのミスもあり不本意なゲネプロだった。できる限りのフィードバックをして慌ただしく過ごしているといつのまにか開場20分前になっていた。

19時30分開演。1ステ目。

ゲネプロとは打って変わって良い初日だった。観客も楽しんでくれたようで、終演後に多くの観客から田中美希恵のキャラクターが好きだと話しかけられた。美希恵ちゃんは万国共通だな。

この作品を上演する最初の土地がNeelの故郷バンガロールであることの必然、言語の違う者同士が普通に舞台上で対話していることの必然、範宙遊泳がこれまでやってきたことの必然、Tadpoleがこれまでやってきたことの必然、すべてが一瞬交差したようで感慨深かった。でもこれはおそらく一瞬の感慨だと思う。明日からまた別の課題が待っているだろうし、感慨に浸る時間もないほど忙しくなるだろう。とにかくとても楽しかった。

 

 

▼1.21(Sat)

 

公演2日目。6時起床。Jim O’Rourke, SOHN, はっぴいえんど などを聴く。朝食は気が向かずスルー。

初日の観客のSNSのレビューなどを受けて予約が増した模様。演劇関係者の予約が多いらしい。

15時30分開演。2ステ目。

昨日に比べて芝居が落ち着いた感があった。芝居が落ち着くというのはとても危険なことで、ある種の疲れのようなものが見受けられた。終演後に俳優にフィードバック。キャラクターの探求をやめぬよう答えの出しづらい課題を課した。たとえば「そのキャラクターがその時目に見ていた景色は何色?」みたいなことを。俳優が探すことをやめたら芝居は腐る。

19時30分開演。3ステ目。バンガロール千秋楽。

客席最後列で僕(音響)とNeel(映像)とAnuj(照明)はオペレーションをしている。そこから観客の頭をみているわけだけど、ずいぶんみんな前のめりで作品を観てくれている。80%程の集客。日に日に客席が埋まっていくのは嬉しい。作品は2ステ目の後にラストを修正したのでそれが活きたと思う。

終演後にTadpoleと仲の良いバンガロールの劇団がホームパーティへ招待してくれた。僕はパーティや社交の場が苦手なのでPiyushとキャロムというボードゲーム

をひたすらやってた。キャロムはビリヤード風おはじきといった趣のゲーム。面白かったけど途中で眠くなってきて勝敗とかどうでもよくなってしまった。学生時代の麻雀大会を思い出した。深夜1時頃宿舎へ帰る。

 

 

▼1/22(Sun)

 

17時30分からTadpoleのプレゼンテーションがあるというのでBritish Councilへ行く。このプレゼンテーションが面白かった。「身体がドラマを導く」「探求をやめない」「言葉を使わず観客とどのようにコミュニケートできるか」など考えていることは僕がこれまで考えてきたこととかなり近いと改めて思った。彼らとは思考も、聴いている音楽も好きな映画もとても好みが合うのに、アウトプットはやっぱり違う。彼らはロジカルな人だけど僕は感覚的に喋ってしまうし表現してしまう。不思議だな。まあでも、そうでないといけないはずだ。そうであるべきだ。

その後みんなでステーキを食べに行った。インドでは牛は神聖な動物なので代わりにチキンやヤギ肉を食べる。のに、ここバンガロールではなぜかステーキ専門店さえある。デリーではBuff(水牛の肉)は食べられるけれども牛肉は食べられなかった。肝心のステーキは若干タレで味をごまかしてる感があったけど美味だった。隣の席のAnujが食べる前にお祈りをしていた。僕はそれを横目に少し泣きそうになった。すごくピュアな行為に思えて。

 

 

▼1.23(Mon)

 

6時30分起床。Flying LotusやPink Floydを聴く。10時からワークショップを行う。

ワークショップのタイトルは「キャラクターをみつける」。初期の稽古で僕が俳優に対して行ったものをTadpoleが取り入れた。概要は、参加者に一人一役ずつキャラクターをこちらから与え、その状態でワークショップ終了(二時間弱)まで過ごしてもらうというもの。「ネガティブな感情を抱くと10秒だけひつじになってしまう人」とか「油の足りないロボット」だとかを休憩中さえも演じてもらう。今作に興味をもった人々が参加してくれたからある程度の心構えはあったのだろうけど、それでも僕がキャラクターを与えるたび参加者は「マジかよ」みたいな顔をしていた。個人的には「本当はとてつもなく頭が良いが周囲からは馬鹿だと思われている人。親にも恋人にも自分が頭が良いことをバレたくない」というキャラクターを演じたレシーさんがよかった。とくに何もやろうとしないのだけど、佇まいと間合いだけでその人物を表現していた。わかりやすくいうとWes Andersonの映画に出ていてもなんらおかしくないといった感じの人。連絡先交換しとけばよかった。

その後稽古。ラストシーンの調整。

 

 

▼1/24(Tue)

 

朝6時起床。出発は6時30分。パッキングはこれから。つまりギリギリの起床。とりあえずB.J.ThomasのRaindrops Keep Fallin On My Headを繰り返し聴きながら支度。6時35分にロビーに行ったが12人中3人しか来ていなかった。

リムジンバスに乗ってバンガロール空港へ向かう。その車内で執筆。読書。 音楽(James Blake)。考え事。

8時頃空港に到着し、空港のカフェで朝食をとった。この時にNeelが嬉しそうな顔で近づいてきて僕に万年筆をプレゼントしてくれた。僕が日本から持ってきたペン数本をすべて使い切ってしまっていたから、それに気付いてプレゼントしてくれたのだと思う。実はこれがはじめての万年筆。生まれてはじめて万年筆というものを握った。日本では主にフリクションを使っていた。Hi-Tec-Cも大好きだが消せるというただ一点を持ってフリクションを使っていた。書いてみてわかったが、万年筆の書き心地はフリクションに遥かに勝る。先端の鋭利さ、グリップ感、デザイン、全部気に入った。僕はこの消せないペンを消せない記憶の抽斗にしまって消せないメモを書き続けることだろう! Neelありがとう。

14時過ぎにムンバイ空港に到着。俳優たちは別のバスに乗って宿舎へ。僕を含むスタッフ陣はそのまま劇場へ向かう。劇場はSitara Studioという「こんなところに劇場があるのか」なところにある劇場(写真参照)。バンガロールのRangashankara劇場がいかにちゃんとした劇場だったかがわかる。ここは劇場というか、箱だ。それも廃墟感溢れるなぜかガソリン臭い箱だ。ガソリン臭さの正体はどうやら劇場スタッフが朝掃除をしていたからのようだ。この「劇場スタッフ」と呼ばれている人は、どこからどうみてもおじいちゃんとおばあちゃんだ。おじいちゃんとおばあちゃんが、廃墟感溢れる箱を、守衛し手入れしている。それだけでこの劇場を好きになるには充分だ。

18時のリハーサル開始までの間に昼食をとってスクリーンを吊って執筆をした。リハーサルはラストの調整とランスルー。

 制作のJahnvi曰くムンバイ公演は、予約が溢れているらしい。明日の予約だけで153名とのこと。この廃墟に100名さえ入れるのか疑問だ、、、。

ちなみにバンガロール公演の3ステージで500名以上の集客があったそう。その評判やレビューが伝わっての今だそうだ。

慌ただしく日々が過ぎていく。まあでも i'm free nothing's worrying me.

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