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2017.11.7(thu) 熊川ふみ シンガポール素描


11.7(thu) SANCTUARY、無事に公演が始まりました。

オーディエンスの反応がとても豊か。感謝の日々です。

今日は休演日。

シンガポールにながらく滞在していると、瞬発的にそわそわするというか、妙な気持ちになる時がある。

部屋の窓から見えている景色はとっても平和。穏やかで、綺麗な不思議なピョウと鳴く鳥の声が聞こえて、白壁のマンションが立ち並んでいて、海には大きな船がたまに汽笛を鳴らしながらゆっくり進んでいく。

都市へ行けばファッションショーのような奇天烈な形のビルが大迫力でダーン、バーンと立ち並んでいて、それに対してなんとなく私は肩をすくめて前を通り過ぎる。 きらびやかなモールは綺麗なものがたくさん並んでいてカラフルで上品で、とても美しい。 たまに三角形をした軍用機が轟音を立てて空をまっすぐ飛んでいく。

本で誰かがシンガポールを竜宮城のようだと言っていたのを思い出す。

幸せそうだ、と感じる。

まだまだ表層しか見ていないというか、いくつにも枝分かれしているうちの1本しか見えていない感じが否めない。 さんざん今回の作品でディスカッションで一緒に作っている彼らからシンガポールが抱えている目には見えない恐ろしさを耳で聞きながらも、肌で感じることができない。あたりまえで仕方ないのだけど。画一的にしかものが見えない。着地点てどこだろう。

リトルインディアという街がある。

リトルインディアはシンガポールに働きに出てきているインド系の人種が住む街で、彼らの大半は所謂ブルーワーカー。 シンガポールの経済を大きく回している。 リトルインディアが好きで、行くととても落ち着く。 わいわいガチャガチャした空気が流れていて、臭くて、うるさくて、土煙が上がっていて、いろんな民族楽器の音が聞こえて、猥雑で、室外機の群がガンガン回ってる。 人間の躍動感とかエネルギーが溢れてる。路上で花を編んでる人がいる。 モスクに裸足でお祈りをしたときの足の裏の感触にとてもほっとする。 あまりにもエネルギーが飛び交ってて疲れちゃうからあんまり長居できないんだけど。 石や化石の卸売りをしている小さな店で、おじさんと石辞典を開きながらおしゃべりしたのは楽しかったな。 ああいう空気がとても好き。

だけどこれも画一的なものの見方なのかな。

正解なんてどこにもないのにね。

原始のころのシンガポールに想いを馳せる。 シンガプーラはサンスクリット語で、ライオンの町という意味。 原始とある王朝の王子が何かの動物をライオンを見間違えてついた名前、と由来には諸説ある。 しがない漁村だったころの、シダ植物と巨大な花がうっそうと繁る熱帯林と、激しいスコールと、穏やかな海に囲まれたこの土地は、ライオンのように荘厳でワイルドで、地面から湧き立つような生命エネルギーに溢れていたんじゃないかな、と空想します。

おおらかに、敬意を払いつつ、舞台の上では芯にそういうエネルギーを持っていたいと思う。

舞台で流れている時間は全部真実で、とても幸せな時間。

正解探しなんてつまんないことはやめて、着地点を探し続ける。

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Theatre Collective HANCHU-YUEI

 2007年より、東京を拠点に海外での公演も行う演劇集団。

 現実と物語の境界をみつめ、その行き来によりそれらの所在位置を問い直す。

生と死、感覚と言葉、集団社会、家族、など物語のクリエイションはその都度興味を持った対象からスタートし、より遠くを目指し普遍的な「問い」へアクセスしてゆく。

 近年は舞台上に投写した文字・写真・色・光・影などの要素と俳優を組み合わせた独自の演出と、観客の倫理観を揺さぶる強度ある脚本で、日本国内のみならずアジア諸国からも注目を集め、マレーシア、タイ、インド、中国、シンガポール、ニューヨークで公演や共同制作も行う。

 『幼女X』でBangkok Theatre Festival 2014 最優秀脚本賞と最優秀作品賞を受賞。

『バナナの花は食べられる』で第66回岸田國士戯曲賞を受賞。

090-6182-1813

(合同会社範宙遊泳)

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